短編小説の一形式。「超短編小説」ともいう。 海外ではフレドリック・ブラウンとレイ・ブラッドベリ、日本では星新一と筒井康隆が代表的なショートショート作家であり、広く影響を与えている。
ショートショート小説の定義は難しい。「原稿用紙十枚以下の短編」が一定の目安になっているが、分量の定義よりも理念的な定義が優先されることもある。 その理念は、アメリカの評論家ロバート・オバーファーストの打ち出した「短編小説の三原則」に則っているとされる。
また、結末はブラックユーモアを基調にしていることが多い。
今日の失敗も、静かに増えているようです。こんにちわ。小さな失敗を物語にするおやゆびです。さて本日は懐かしい曲をテーマにした物語です。どうぞお楽しみ下さい。 職場の後輩が、イヤホンを片耳だけ外して言った。「先輩、この曲知ってます?」 スマホから流れてきたのは、どこかで聞いた旋律だ。 知っている。 絶対に知っている。 僕は記憶の引き出しを全力でひっかき回した。 ユーミン……いや、違う。 山下達郎? いや、もっと……「知ってる知ってる! えーっと」 焦ってはいけない。 ここで答えられれば、「若いのに渋いね」と言われるやつだ。 僕の株が上がる場面だ。「これ、大瀧詠一でしょ!」 後輩の目が丸くなった。 …
「君は無能だな。」と上司が言う。 「そうなんですよ。だから生きるのが大変で、大変で。(笑)」部下は笑って返す。 そして続けて、「先輩はいいっすねw優秀だから生きるのが楽でしょ?先輩に生まれ変わりたいなあ。あはは」 上司はイライラした。
閉店時間間際のスーパーマーケットの総菜売り場に、パックに入った揚げ物が売られている。その揚げ物は四角い。値引きシールが何層にも重なって貼られている。ラベルには「電話」と印字されている。どうやら電話を揚げた物らしい。俺はそれを買った。電話など食べたことがない。家に帰り、さっそくソースをかけようとすると、電話の揚げ物が震えた。恐る恐る衣を箸で剥がしていく。一台のスマホが出てきた。画面に文字が表示されている。「着信:お母さん」俺はところどころに衣が付いたままのスマホを、流し台の三角コーナーに捨てた。スマホはしばらく震えていたが、やがて大人しくなった。俺はほっとして、箸の先に付いたソースを舐めた。
「お散歩(さんぽ)」(2012/01/09) 私(わたし)は、よくお散歩(さんぽ)に出(で)かける。それも家(いえ)の近(ちか)くを歩(ある)くんだ。遠(とお)くへ行(い)かないぶんお金(かね)もかからないし、気分転換(きぶんてんかん)や運動(うんどう)にもなってしまう。 近所(きんじょ)といっても、まだまだ知(し)らない所(ところ)がいっぱいある。歩(ある)いていると、通(とお)ったことのない道(みち)や路地(ろじ)が私(わたし)に誘(さそ)いかけてくる。こっちへおいで、この先(さき)にはいいことが待(ま)ってるよって。私(わたし)は、ついついその誘惑(ゆうわく)に負(ま)けて、フラフラと入…
夜、酒を飲んでいる。ふと、部屋のテレビが目に入る。テレビにハエがたかっている。ということは。俺はリモコンを手に取り、テレビをつける。ニュースが流れている。「死亡」というテロップが出ている。やっぱりな。誰か死んだニュースが流れている時は、ハエがテレビにたかっているのだ。わかりやすい。俺は酒を飲みながら、誰かが死んだニュースを楽しむ。いつからかこんな夜を過ごすようになったのだろう。テレビの変化なのか、ハエの変化なのか、よくわからない。天気予報が流れ始める。俺はテレビを消す。
俺がバイトしているラブホテルに、若い女と、若くはない男のカップルが入ってきた。防犯カメラの映像を見ていたのだ。男は、手に何かを持っていた。それは遺影だった。年老いた女が写っていた。「見せんのさ」横にいた先輩が言った。「見せるんすか」「遺影に見せるのさ、行為を」「あの二人はどんな関係なんすか」「知るもんか!」それから二時間後、そのカップルが部屋から出てきた。男は相変わらず遺影を持っていた。だが、その遺影に写る年老いた女の、目の部分に、ガムテープのような物が貼られていた。「見せなかったんすかね」「知るもんか!」
夜中、バイト帰り、牛丼屋に寄った。腹が減っていた。メニューを見ていると、牛丼やカレーに混じって、『ガラス玉』というメニューがあった。美しいガラス玉だった。注文した。すぐにそれは運ばれてきた。牛丼用の器の中に、拳大のガラス玉が入っていた。店の照明にきらめいてきれいだった。お盆にはハンマーが添えられていた。きっとこれで砕けということなのだろう。だからハンマーを手に取り、ガラス玉を砕いた。それは粉々になり、ますます美しかった。俺はそれをしばらく眺め、満足して牛丼屋を出た。腹は満たされていなかった。だがもう金はなかった。だが俺は笑っていた。
「小指娘(こゆびむすめ)」(2012/01/07) 小(ちい)さな身体(からだ)の私(わたし)は、恋(こい)をするのも命(いのち)がけ。彼(かれ)に近(ちか)づくときは、大声(おおごえ)で叫(さけ)ばないと踏(ふ)みつぶされてしまう。それに、彼(かれ)の指(ゆび)で頭(あたま)をナデナデされるときは、気(き)をつけないと骨折(こっせつ)してしまうかも。キスのときなんか、鼻息(はないき)で飛(と)ばされそうになったり、下手(へた)をすると呑(の)み込(こ)まれてしまうかもしれない。 それでも、こんな小(ちい)さな私(わたし)なのに、彼(かれ)はとっても優(やさ)しくしてくれる。私(わたし)のこと…
アリの巣の観察キットというのを買った。餌と巣の素材を兼ねている特殊なゼリーを入れた透明なプラスチックケースの中に、アリを入れると、勝手に巣を作って、観察が出来るという商品だ。何匹かのアリを入れて数日間経つと、ケースの中にすっかり巣が出来た。感心した。アリの巣の中には様々な役割を持った部屋があるそうで、スマホでそれらを調べながら面白く観察していると、隅の方に、不思議な部屋を見つけた。スマホで調べてもよくわからない。虫眼鏡で拡大して見てみると、どうやらそれは、小劇場のようだった。今は誰もいないが、照明機材や椅子が並べられている。俺は、昔劇団で売れない俳優をやっていた頃のことを思い出した。口の中に嫌…
今日の失敗も、静かに増えているようです。こんにちわ。小さな失敗を物語にするおやゆびです。さて本日は社内報をテーマにした物語です。どうぞお楽しみ下さい。 その日、僕は確信していた。 これは歴史的な改革だ、と。 総務部が長年作り続けてきた社内報——白黒印刷、フォントはMS明朝、レイアウトは昭和のまま。 そこに僕は提案したのだ。 「かわいいイラストのキャラクターを登場させて、親しみやすくしましょう」と。 まさかすんなり通るとは思っていなかった。 しかし部長は「いいね」と言った。 デザイン担当の後輩も「やってみましょう」と言った。 僕の企画書に添えたキャラクターのラフ画——名前は「ほのかちゃん」——が…