深夜二時の地下鉄ホーム。最終列車が去った後の静寂は、作業員の田村にとって日常だった。 「よし、今日も点検するか」 工具箱を手に、田村はホームの端へ向かう。線路とホームの隙間——そこに落ちた私物を回収するのも、彼の仕事の一つだった。 懐中電灯で照らすと、財布が一つ、傘が二本。それから、奥の方に光る何か。 田村は隙間に身を滑り込ませた。狭い。ホームの下は想像以上に暗く、湿っていた。膝をつき、這うように進む。 カツン、と工具が線路に当たる音がした。 その瞬間、奥から何かが動く気配がした。 田村は手を止めた。耳を澄ます。聞こえるのは自分の呼吸だけ。気のせいだろうか。再び這い始めると、また——カツン。 …