「ワグネリアンが天国に旅立っなぁ。」 コギンちゃんがビールを飲みながらつぶやいた。 今日もコギンちゃんとガンちゃんは夕ぐれ食堂。とっしゃんは珍しく用事があるとかで不参加だ。 「私はあの馬に特別な思入れはないですけど、福永騎手にとってはかけがえのない馬だったでしょうね。」 ガンちゃんは十分に噛んで飲み込んだスルメの後味を熱燗で流し込んだ。 「俺らが知ってる若いころの福永は決して上手いジョッキーじゃなかったもんな。 というかどちらかというと下手くそな部類やったろ。 オヤジさんみたいな天才肌じゃないし、あの頃は武豊やヨコノリはもちろん、まだ現役に岡部や田原、藤田に四位、松永幹夫とかおったからなぁ。 …