2024.09.08 読了 忘れられない恋がある。それはつとめて忘れたくない恋でもある。なんだかいつになく素敵な書き出しであるが、これを書いているのは腹の出た中年男ということを忘れないでほしい。そうすると素敵な感じの書き出しが、とても気色の悪いものに思えてくるはずだ。 しかし、そんなぼくにだって忘れられない恋はいくつかある。幼い頃の恋、大人になってからの恋──たくさんの恋があったわけではないけれど、どれも忘れられない思い出となっている。その中にMという女の子がいる。彼女とは中学の三年の時に同じクラスで、とても素直で優しく、明るい女の子であった。 Mとは席も隣で、ぼくは冗談めかしてよく彼女に面と…