ジャック・ベッケル(Jacques Becker)による1945年作『偽れる装い(Falbalas)』について。 装うことと映画監督 ファッションデザイナーであるフィリップは彼にとってのミューズを探し続けている。ミューズと見做した女性を見る時、フィリップは現実世界のその女性を見ているのではなく、その向こうに存在するイデアを幻視している。そして、フィリップは理想世界にあるその存在を現実のものとして捉えようとするかのように服をデザインする。フィリップが服を作っていくに従い、ミューズは現実化されていく。フィリップの作った服を着た女性はミューズへと変容されていき、そしてフィリップを愛するようになる。し…