Juliette Binoche
俳優、女優
是枝裕和監督の『DISTANCE』を観て初めて映画に「ときめく」という感覚を抱いた。物語は心を動かし、揺さぶる。映画にそんな感情を抱くのは初めてだった。私はあまり幸せな人生を歩いてきたとは言えない。様々なものは奪われ、搾取された。そしてスポイルもされた。是枝映画はそんな私のアジールだった。そこでは私は奪われたものも、搾取されたものも、ダメになった自分も許された。是枝映画は現実の干渉を受けない外法権だった。是枝映画は私からなくなったものを再び与えてくれた。特に『ワンダフルライフ』(1999年)は10代の私にとってもノスタルジックに映った。『ワンダフルライフ』は死後の世界を描いている。死後、1つの…