ジョゼ・サラマーゴの白の闇(原題 ENSAIO OBRE A CEGUEIRA)を読んだ。それは何の前触れもなく突然始まった。だいたいの人は前触れがあってもそれに気づかず、何かが突然起こったと思うのだが、この場合は本当に何の前触れもなかった。ある時車を運転していて信号待ちをしていた男が突然視力を失ったのだ。そして、その不思議な症状は静かに確実に広がっていった。最初に視力を失った男を親切に家まで送っていった男に。最初に視力を失った男を診察した眼科医に。たまたま、その時に眼科の待合室にいた人たちに。この不思議な症状に何らかの説明がつく前に、政府はこれらの視力を失った人たちと濃厚接触者を、廃精神病院…