もう一か月ほど前のことになる。9月の最後の日曜日、封切られたばかりの映画「ジョアン・ジルベルトを探して」を観に行った。春先に雑誌で知って以来、ぜひ封切を観たいと思っていたこの映画のタイトルは、ボサノヴァの父とも呼ばれるジョアン・ジルベルトの存在が、生きながらにして既に伝説と化していることを物語っていた。 いくら伝説的とは言っても、ジョアン・ジルベルトがその映画の撮影時点でリオの街に暮らしていたことは間違いない。2008年のボサノヴァ誕生50周年記念ライブを最後に、公の場に姿を現していないとは言え、健康上の問題で人前に出られないというわけでもなさそうな彼を、ただ「探す」ことで成立するドキュメンタ…