John le Carré 作家、脚本家、プロデューサー、俳優
ベルン大学とオックスフォード大学を卒業後、イートン校で教鞭を取り、外務英連邦省に転職、MI6に配属となり、主に西ドイツの大使館、領事館にて外交官として勤務する。その傍ら、自身の経験を基に小説を書き始め、1969年に処女作『死者にかかってきた電話』を発表。1963年に発表した第3作『寒い国から帰ってきたスパイ』ではエドガー賞を受賞。以後、リアルで非情な諜報戦を背景としたスパイ小説の数々を発表する事となる。
スパイものを得意とするイギリスの小説家で、晩年の作品に当たる。1930年生まれ、2020年没。 1963年から1977年の間にスマイリー3部作と呼ばれる有名なスパイ小説を書いた。 国家の為の冷徹なスパイの役割と、倫理や感情を持つ生活者との葛藤を描いてきた著者が晩年どの様な境地に達したのだろうか。 あらすじ ケニアのイギリス大使館職員のジャスティンの妻は製薬会社の治験データの過小評価や、アフリカの難民を使っての人体実験を批判し続け、ケニアのトゥルカナ湖で殺害される。腐敗した地元警察も、ケニア政府も、そして2国間の友好を重視し、多くの巨大製薬会社の治験結果の前提を崩しかねない治験批判に同意できない…
レタントンローヤル館にお出で頂き有難うございます。今日ご紹介するは「シルバービュー荘にて」(2021)です。 激しい雨が降り注ぐロンドン、ウェスト・エンド朝十時。ぶかぶかのアノラックを着た若い女リリーがある家の前で立ちすくみ、ボタンを押した。ドアから現れた男、プロクターに彼女は持ってきた手紙を渡し、立ち去る。彼女はタクシーを呼び止めて、リヴァプール・ストリート駅までと言うのだった… こんな書き出しで始まるスパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレの遺作を読んでみました。その感想を簡単に紹介したいと思います。 まず、不勉強にもこの小説が存在しているとは全く知りませんでした。前作「スパイは今も謀略の地に」(…
アマプラで映画視聴190作品目はアメリカ映画の「われらが背きし者」でした。個人的レーティングは7.5/10です。邦題の「背きし者」という意味がなんか分かりづらいので、原題ググったら「OUR KIND OF TRAITOR」になってました。TRAITOR=裏切り者=背きし者、ですね。このタイトルは映画視聴後に考えてみると味わい深いです。 モロッコでの休暇中、イギリス人の大学教授ペリーとその妻ゲイルは、偶然知り合ったロシア・マフィアのディマから、組織のマネーロンダリング(資金洗浄)の情報が入ったUSB をMI6(イギリス秘密情報部)に渡して欲しいと懇願される。突然の依頼に戸惑う二人だったが、ディマ…
さて、皆さん所謂スパイと言う人たちとは全く縁遠いと思いますが、、、。 企業スパイというのは結構居たりするものです。 昔々ある企業の海外拠点の営業担当者が、顧客企業の中のエンジニアに裏金を渡して、競争相手の価格情報を入手していました、、、、、。その会社では顧客に提出する見積価格の基となる原価等も社内メールでやりとりしており、当該の裏情報も同じように社内メールでやりとりしていましたが、ある日この営業担当者は、忙しかったからか、何か他の考え事をしていたのか、この原価情報や、その下に連なる裏情報に関するやりとりまで含めて、見積提出の際に、うっかり顧客企業にそのまま転送してしまいました。営業担当者は顧客…
死者にかかってきた電話 (ハヤカワ文庫 NV 188) 作者:ジョン・ル・カレ 早川書房 Amazon 著名な作家のマイナーなデビュー作を読むのは楽しい。シリーズ物となれば尚更だ。よく知っているキャラクターたちの若いころの(つまり、初登場時の)姿が新鮮でおもしろい。 たとえばジョージ・スマイリーは後のシリーズと変わらず、いつも通り冴えない。なんせ「身分違いの美女と結婚した」と社交界で陰口を叩かれている、そんなエピソードから物語が始まるほどで、スマイリーがいかに冴えないかという描写にル・カレはやたらと力を入れている。嗜虐的なほどだ。 しかし中盤で、そんなスマイリーがソリの合わない上司(のちのシリ…
2023年6月30日 ジョン・ル・カレの遺作「シルバービュー荘にて」を読みました。 前作の「スパイは今も謀略の地に」がハードボイルド度90%だとしたら、こちらはハードボイルド度は20~30%くらいでしょうか? そもそも主人公がスパイですらない、、、、、('◇')ゞ ですが小説としてはとても良く出来ています。 ル・カレは1950年代~1960年代初頭までイギリスの情報部で実際に勤務していたらしい。で、1963年にソ連の二重スパイだと発覚したキム・フィルビーがモスクワに亡命後ソ連当局にバラした英情報部員の名前の中にル・カレの名前も含まれていた為、それ以上情報部員としては活動出来なくなったのだ、、と…
2023年3月23日 先日買ったジョン・ル・カレの「スパイは今も謀略の地に」を読んでいます。この手の小説を読むのは久しぶり。(・'v`・) ル・カレ、いつの間にか亡くなっていたんですね。2020年12月12日に肺炎で亡くなったと言う事なので、ひょっとしたらコロナだったのかも、、、、。 映画化された作品もありますね。 「ナイロビの蜂」とか「裏切りのサーカス」とか。 映画もどちらも面白かった。 で、 スパイ小説の一部もハードボイルドだと思う(・'v`・) 普通はハードボイルドと言えば推理小説、探偵小説の一部のジャンルの事を指しますが、、、、。主人公がタフガイで、常に感情に流されず、客観的な視点で周…
★★★★☆ あらすじ 妻と共にモロッコで休暇を過ごす男は、現地で知り合ったロシアのマフィアの男からUSBメモリを託され、帰国後、英国諜報機関MI6に渡すよう頼まれる。 感想 序盤は、世間知らずの大学教授の主人公が、ロシアのマフィアに騙され、犯罪に利用されてしまう物語なのかと冷や冷やしてしまった。だが実際は、組織が代替わりして身の危険を感じたマフィアの男が、家族と共に亡命しようと必死に主人公にすがりついていたことが分かってくる。 しかし身の危険を感じる状況だったにもかかわらず、マフィアの男は何事もないかのように派手に娘の誕生日パーティーを開いたりしていて強心臓だ。だがそうやって普段通りの姿を見せ…
冷戦が終わったとき、これでスパイ小説も終わった、とよく言われた。米英を中心とする資本主義諸国と旧ソ連を盟主とする共産主義諸国がイデオロギーの対立を掲げ、角突き合わせていたからこそ、米英ソの諜報合戦は関心を集めた。冷戦が終われば、スパイは仕事がなくなるだろうと皆が思ったのだ。当然、そんなことはなかった。ル・カレはその後もスパイ小説を書き続けた。ただ、重心の置き方は変わった。 英国情報部はオックスブリッジで部員をリクルートする。パブリック・スクール出身者が多く、家族や交友関係、本人の思想信条について調査するまでもないからだ。彼らは生え抜きであり、組織の頭、中枢になる人材である。代々諜報活動に従事す…
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