「瞳をとじて」 高級な作品ですね。二時間五十分近くあるのに長さを感じさせない作劇のうまさは絶品で、非常にシンプルな話なのに、全体に深みのある味わいを感じさせる映画でした。登場人物の表情から溢れ出る感情がいつの間にか心に何者かを生み出していく気迫を感じ得る一本でした。監督はビクトル・エリセ。31年ぶりの監督作品です。 1947年、「悲しみの王」というテロップの背後に巨大な邸宅が映されて映画は幕を開ける。邸宅内では一人の老人レヴィがピアノを弾いていて、中国人の召使が窓を開けて明かりを入れ、フランクという人が来たと取り次ぐ。やって来た男フランクに余命わずかなレヴィは、上海へ行ってジュディスという女性…