2003年,フセイン政権が崩壊して3週間後のイラク.12歳のクルド人少年アーメッドは祖母と2人,遙か900キロ離れたナシリアを目指して旅に出る.戦地に送られたまま戻らない父を捜すため,なけなしの現金と唯一つ父が残した縦笛を携えて.片言のアラビア語で,クルド語しか話せない祖母をかばいながらの道程は過酷だったが,親身になって世話をしてくれた元兵士のムサをはじめ,様々な得難い出会いも経験するのだった…. スレイマニアのクルド人がバース党に武装闘争を開始したのは,1991年3月のことだった.積年の民族対立で虐殺された少数民族クルド人とアラブ人.推計では,300もの集団墓地に乱雑に放置された遺体25万人…