Susan Sontag、1933年ニューヨーク生まれ、 ハーヴァード、パリ大学で哲学を学ぶ。 雑誌編集者を経て大学で哲学を講じる。 2004年12月28日没。
アメリカの批評家、作家。代表作に『隠喩としての病』『反解釈』『写真論』など。
なぜ「スーザン・ソンダク」と誤って記憶している人が多いのかは疑問。
アザリーン・ヴァンデアフリートオルーミ『私はゼブラ』のつづきと、 nainaiteiyan.hatenablog.com ニーチェ『ツァラトゥストラかく語りき』と、 スーザン・ソンタグ『ラディカルな意志のスタイルズ』河出書房新社 (2018年) を読む。 ニーチェは善悪の二分法を否定している。 「持つべき善は存在しない」と述べている。 その理由を、ソンタグの本で回収することができた。 ニーチェは反プラトン主義者であったとされる。 「神は死んだ」が本当に意味するものについてはまだ分からないが、「プラトンは死んだ」なのだろうか。どうなのか。 そのあと、ニーチェの思想を継承しつつ、文学で武装する『私…
スーザン・ソンタグ『反解釈』ちくま学芸文庫 (1996年) を読む。 導入部分から数十ページじっくり読んでみた。 内容としては、ノエル・キャロル『批評について』に近い。ソンタグは冒頭で批評に対する批評を行う。だから「反」解釈というタイトルなのかもしれない。 nainaiteiyan.hatenablog.com ソンタグによれば、今日の批評というものは俗物根性で、芸術作品を冒涜するものが少なからずあるという。 作品は批評を免れない。 だからノエル・キャロル『批評について』においても論じられていたように、作品に「意図」というものを混ぜ合わせて批評家に抗う営みが行われる。 批評のための批評。 かく…
『他者の苦痛へのまなざし』を読んだ記録。 ある日このツイートが流れてきた。 ここのところの写真や映像をどう受け止めたらよいかわからない人は、気持ちと考えを落ち着ける役に立つかもしれない。スーザン・ソンタグ『他者の苦痛へのまなざし』(北條文緒訳、みすず書房、2003年) pic.twitter.com/lCfULR5HIZ — SatokoTakayanagi (@SatokoTakayanag) 2022年4月5日 まさに私のことだ。どう受け止めたらいいかわからなかったし、落ち着きたかった。 「ここのところの」と投稿者が言っているのは、2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻のこ…
今日は衝撃的なニュースがあった。 b.hatena.ne.jp竜ちゃんの死去、「なんで?」「どうして?」と思った人は多いだろう。俺もその一人だ。三浦春馬、竹内結子、神田沙也加、上島竜兵…芸能界の一線で活躍していた人達。誰しもがなりたくてもなれる存在じゃない。多くの人々を物語の世界に引き込む演技力がある役者、魅惑的な歌声で空間を一変させ様々な感情を喚起する歌手、ありとあらゆる方法で人を笑わせる芸人。実力がないとなれないし、テレビや映画に出ることはない。だからこそ、人並みよりも多くの収入を得ていたり、豊かな生活をしていると思ってた。例えば俺みたいに、低所得で人間関係が希薄な生涯独身者予備軍が、風呂…
ウクライナ情勢に関する報道が、連日深刻さを増してきています。真っ白な雪道を、踏み潰すように猛進する戦車の群。黒煙が立ち昇った火力発電所。それらの映像をテレビ画面で見ながら、この十数年、幾たびとなく襲われた同じ意識状態にさらわれて行きそうになっている自分を「ここ」に取り戻すべく、ある本を手にとりました。 『他者の苦痛へのまなざし』スーザン・ソンタグ著 他者の苦痛へのまなざし 作者:スーザン ソンタグ みすず書房 Amazon 冒頭、著書にはこう綴られています。 現代の生活は、写真というメデイアをとおして、距離を置いた地点から他の人々の苦痛を眺める機会をふんだんに与え、そうした機会はさまざまな仕方…
『アウステルリッツ』 W・G・ゼーバルト 著 最近、この本の新装版が出ましたのであらためて読んでみました。 表紙の男の子の写真が気になり手に取ったら、ゼーバルトの世界観に引き込まれてしまったように_ふと眺めて目に飛び込んでくるものから、突然様々な印象が湧き上がるような、未整理の無意識的な状態そのままを文章にした感じの、延々とした言葉の羅列。ものを見た時に人はどう認知していくのか、というのを生々しくあらわしたかのよう。 登場する人物、建築史家のアウステルリッツが街を徘徊し、辿り着いた建築物、その歴史的背景を畳み掛けるような情報知識で一気に甦らせていく。 その描写は、自分が曰くある様相の建物に近づ…
田中純 (2022年4月28日刊行,東京大学出版会,東京, vi+314+xxxiii pp., 本体価格4,300円, ISBN:978-4-13-010152-3 → 版元ページ)【目次】 序 1I 行為する像【イメージ】 第1章 創像された怪物の解剖学──像行為論の射程 4 第2章 握斧【ハンドアックス】の像行為──起源/根源のメイキング 13 第3章 不死のテクノロジーとしての芸術──生政治のインスタレーション 22 第4章 物質論的人文知(ヒューマニティーズ)としての考古学──同時代への退行的発掘 31 第5章 死者の像の宛先──スーザン・ソンタグの亡骸 47II 『ムネモシュネ・ア…
・『「パレスチナが見たい」』森沢典子 ・『パレスチナ 新版』広河隆一 ・『新版 リウスのパレスチナ問題入門 さまよえるユダヤ人から血まよえるユダヤ人へ』エドワルド・デル・リウス ・『ホロコースト産業 同胞の苦しみを「売り物」にするユダヤ人エリートたち』ノーマン・G・フィンケルスタイン ・自爆せざるを得ないパレスチナの情況 ・9.11テロ以降パレスチナ人の死者数が増大 ・愛するもののことを忘れて、自分のことしか考えなくなったとき、人は自ら敗れ去る ・物語の再現性と一回性 ・引用文献一覧・必読書リスト その二 『アラブ、祈りとしての文学』岡真理(みすず書房、2008年/新装版、2015年)の引用文…
今週は穏やかな陽気で助かりました。梅雨前の束の間の穏やかさ、でしょうか。 先週、今週と放送されたNHKの番組『映像の世紀 バタフライエフェクト「ヴェルヴェットの奇跡 革命家とロックシンガー」』は面白かったです。 amass.jp 1968年チェコの劇作家ハヴェルは自分の作品を上演するために訪れたNYで、デビューしたばかりのロックバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを知り、熱心なファンになります。 アンディ・ウォホールがプロデュースし、麻薬や同性愛を公然と歌うヴェルヴェット・アンダーグラウンドに、ハヴェルは自由を感じたそうです。ハヴェルはチェコへレコードを持ち帰り、その影響を受けた''Th…
新国立劇場のバレエ『シンデレラ』の初日(4/30)、2日目(5/1)、千穐楽(5/5)を見て、自分がバレエに何を求めているのか再確認した。バレエ(ダンス)はいわゆる身体芸術だが、ミスをせず、ただうまく踊るだけでは芸術とはいえない。そこに身体を超える〝なにか〟が現出しなければならない。この10年間、米沢唯を見続けてきたのは、この奇跡的な時空間を共有したかったから。今回そのことに改めて気づかされた*1。「ダンスは、身体への注目と精神への注目が一つとなる、より高次の注目を命じている」(スーザン・ソンタグ「ダンサーとダンス」)。ソンタグに言われるまでもなく、ずっとそうしてきた。この「高次の注目」を米沢…
はい、どーん。 なにここ? 角川武蔵野ミュージアム。 kadcul.com はい、やって来ました東所沢。女が一度行ってみたいと言っていて、遠いからゴールデンウィークにでも行きますか、ということになった。まあ、たしかにこの建造物はちょっとすげえよ。 だいたいおれの属性と角川武蔵野ミュージアムのチケット案内を見れば事情はわかってくれると思うが、当日券狙い。ネット予約券と当日券は別枠なので、ネット予約が埋まっていても、当日券は存在する。 とはいえ、当日券も数を絞っているので、早々に売り切れることがあるという。して、ゴールデンウィークの5月3日、横浜から遠く東所沢まで(経路検索で川崎乗り換え南武線で府…
中村桂子*1「自然を理解 生きものとして生きる」『毎日新聞』2022年1月8日 アシーナ・アクティピス『がんは裏切る細胞である』*2の書評。 少し抜書き。 今から半世紀前に、米国で「がん対策法」が発効した時のことは記憶に新しい。当時は不治の病とされていたがんの原因究明と治療法開発への挑戦の始まりである。具体的には、医学に当時急進展していた分子生物学を取り入れ、病原体の可能性があるウイルスの遺伝子解析などを始めたのである。この戦略は成果をあげ、今ではがんの正体はかなり見え、対処法も出てきている。 ここで明らかになってきたがんの正体は、従来の病気のイメージとは異なる。「がんは私たちの一部であり、そ…
まず、ジャン=ピエール・クレロを引用するところから話を始めよう。 多くの哲学者たちは、バランスのとれた著作を執筆することに配慮しており、少なくとも18世紀以後は、一定の文量を美学に割いている。にもかかわらず、かくも大部分を快楽と苦痛とに割き、そこにあらゆる情念を還元しそうなほどのこの理論において強烈な印象を与えるもの、それはその名に値する美学の――彼の著作を全体として捉えるかぎりでの――ほとんどといっていいほどの不在である。[...]これは、 感情そして行動において、まったき無私無欲を認めない功利主義にとって、美の理論あるいは芸術論を生み出すことはできないという定めなのだろうか。(Jean-P…
読書会概要日時 2022年4月16日(土)17時30分〜19時50分場所 東京都内 某喫茶店参加者 団長 書記課題本 呉 明益 著『自転車泥棒』 推薦者:団長 自転車泥棒 (文春文庫) 作者:呉 明益 文藝春秋 Amazon 書誌情報原著は2015年6月台湾の麥田出版から刊行、邦訳は2018年11月に文藝春秋から刊行されました。呉(ご)明益(めいえき)の著書としては2015年の『歩道橋の魔術師』(白水社)に次ぐ2冊目の邦訳です。天野健太郎 訳『歩道橋の魔術師』に続き、本書の訳出も手がけた天野健太郎さんは、呉さんと同じ1971年生まれ。観光分野における人気とは対照的に、従来の日本ではほとんど市場…
説教したがる男たち 作者:レベッカ・ソルニット,ハーン小路恭子 左右社* Amazon アナ・テレサ・フェルナンデスの絵 『説教したがる男たち』 レベッカ・ソルニット著 ハーン小路恭子訳を読む。 タイトルがキャッチ―で内容は男性であるぼくにとっては耳が痛くなったり、恥ずかしたくなったり。とかく男性は女性に対してマウンティングを取りがち。 で、上から目線で説教をたれたりする。マンスプレイニングというらしいのだが、この行為は同性に対してもとるよな。年下だったり、後輩だったり、新人だったり。 まずは論より証拠。男どものゲスなデータをいろいろあげている。 「ここ合衆国では報告されているだけでも6.2分…
若かりし頃に読んで影響を受けた本。 ジョージ・オーウェルの「1984」。 まずこれが一番最初に頭に浮かびます。 脳裏に焼きつく本は他にも多々あって、たとえばスーザン・ソンタグの「写真論」なんかは、こんなにあたたかいまなざしがあるのかと、初めて読んだときの感動を今でも強く覚えていますが、その後の考え方に大きな変化をもたらしたという点では、やはり「1984」です。 そんなわけで、いつかこれの原書を読まなくてはと、頭の片隅でずーーーっと使命のように感じていました。 なのにいっこうに手を出せず、このほどやっと、ほんとにやっと、行動に移すことができました。 原書となると、ただでさえ骨折りのところ、隙間時…
2012年、スイスで開催された東日本大震災の一周年追悼式で、クレー作品を映写しながらのローベルト・ヴァルザーの詩の朗読会が行われたことがきっかけとなってつくられた詩画集。日本語とドイツ語で行われた朗読会での聴衆の反響が大きかったことから、拡大編集と書籍出版にまでいったのだから、大したことだ。ヴァルザーとクレーの組み合わせは、批評家スーザン・ソンタグのヴァルザー評、ヴァルザーは「散文によるパウル・クレーである」という示唆による。散文小品ではなく詩が選ばれたことは、短時間に彩り多くという主宰者側の狙いもあったのであろうが、詩に関心を持つものには嬉しい選択である。朗読会で実際に選ばれた8篇を、本詩画…
顔も上げられないような日々を過ごしていた。やっと息をつくと色とりどりの花が芽吹いていて道が眩しい。毎年楽しみに待っていた沈丁花は盛りを過ぎて褐色にくすんでいる鉢すらあった。 脱水寸前の状態で水にありついたような勢いで映画を観て本を読んでいた。アピチャッポンの新作、ロベール・ブレッソンの硬質な映像、ベルトルッチのドリーマーズ、マーガレット・アトウッド、尾崎翠、そしてオーシャン・ヴオン。一体何が私を生かしているんだろう。 情報や義務のようなものに自分が埋没していくようだ、という感覚があった。それと同時に、物事の表面しか、正解とされる面しか見てはいけないのだという感覚に陥っていた。事物には表と裏があ…