前稿では,童話『銀河鉄道の夜』の九章「ジョバンニの切符」で登場してくる「橄欖の森」の「まっ赤に光る円い実(赤い実)」を便宜的に「リンゴの実」とし,この「赤い実」が「瞳」のメタファーになっていることを報告した。また,賢治はこの「赤い実」=「瞳」を英語訳の聖書に出てくる “apple of eye”(瞳の意味)をヒントにして物語に採用した可能性についても報告した(石井,2014b)。 しかし,聖書に出てくる果実は「リンゴ」ではなく「イチジク」,「ブドウ」,「オリーブ」,「ザクロ」などである(橋本・八木橋,2011)。そこで,本稿では「リンゴ」以外の可能性を明らかにするため,改めて「赤い実」の植物が…