タンザニア第二の都市ムワンザを舞台にしたドキュメンタリー映画。
「ダーウィンの箱庭」と呼ばれたアフリカ・ビクトリア湖の豊かな生態系が、外来魚「ナイルパーチ」の放流で壊滅的な打撃を受ける一方、欧米や日本へ輸出するためのナイルパーチ漁が盛んになる。グローバル化の進行によって、現地の人々がより厳しい生活を強いられるようになっていると主張する。107分。
フーベルト・ザウパー監督。
オーストリア、ベルギー、フランス/2004/英語、ロシア語、スワヒリ語/カラー/35mm/107分
監督:フーベルト・ザウパー Hubert Sauper
アフリカ最大の湖、ビクトリア湖。1960年代に実験的に放された淡水魚ナイルパーチは200を超える在来種を食べ尽くし湖の主となった。舞台はタンザニア。激変する生態系と共に出現した一大魚産業。片寄った繁栄を支えることでかろうじて成り立つ住民たちの生活は悲惨を極める。蔓延するエイズ、女性たちは娼婦となり、ストリートチルドレンは夜を彷徨う。主にヨーロッパや日本に輸出される白身魚を運んだロシア製おんぼろ飛行機が、往路に運んでくるのはアフリカ内戦向けの武器なのか。人工的食物連鎖が生んだ地獄のような現実にカメラが向き合う。
人口約3500万人のうち200万人あまりが食糧不足に苦しむといわれるアフリカ・タンザニア共和国。その北部に広がる世界第3位の湖・ビクトリア湖からは連日、白身魚ナイルパーチの切り身が冷凍食材としてヨーロッパ・日本にむけ大型ジェット輸送機で輸出されている。しかし、この食料輸出は一部の人を潤すだけで飢餓・貧困・HIV感染のまん延・武力紛争の続発といったアフリカのかかえる問題を解決する糸口になっていない。魚の加工工場と空港がある湖畔の町・ムワンベにカメラを据え工場主・漁師・輸送機パイロット・ストリートチルドレンなどさまざまな人々を見つめることでアフリカの構造的な貧困問題を浮き彫りにする。
Darwin’s Nightmare(原題)
制作:仏・オーストリア・ベルギー/2004年
2006年8月、ムワンザ及びタンザニアの現状、特に武器密輸、下辺層の生活などを中心に実情と異なる箇所があるとして、タンザニアのジャカヤ・キクウェッテ大統領は正式に抗議声明を出した。また『ダーウィンの悪夢』関係者に対する捜査や入国禁止の処分が行われた。
ザウパー監督はこの抗議を、表現の自由の弾圧と反発している。