現代音楽の作曲家、武満徹(1930~1996)は、自身が作詞したポピュラー曲も少なくない。中でもよく知られているのは『翼』と『小さな空』だ。元同僚は、今年の年賀状にこの『翼』のことを書いてきた。この曲は「遥かな空に描く『自由』という字を」で終わっている。コロナ禍で閉塞感に覆われた現代。武満の曲は大雪や吹き荒れる北風に負けないよう、私たちの背中を押しくれるように響くのだ。 元同僚は、様々なことに詳しい物知りだ。記者活動も尋常ではなく、彼の多岐にわたる情報にはいつも驚かされたものだ。当然、クラッシック音楽にも造詣が深い。ある時、彼と喫茶店に入り、コーヒーを飲みながらテレビの特集番組で流れた音楽につ…