Tulip Fever
17世紀のオランダ・アムステルダム。遥か東の国から来た珍しく美しい花―チューリップ―を、人々は我を忘れて手に入れようとした。民衆は大枚はたいてチューリップへの投機に熱中し、球根の値段は上がり続けた。
その中でも特に高価なのが、希少な縞模様のチューリップ。それを人々は“ブレイカー(色割れ)”と呼んだ。この神々しく、真紅の縞模様が入った白い花が、人々の運命を変えていくことになる―。孤児として聖ウルスラ修道院で育った美しい少女、ソフィア。彼女は成人し、富豪で有力者である商人、コルネリス・サンツフォールトに嫁ぐこととなる。しかしながら、いつまでたっても子どもを授からないソフィアとの生活にコルネリスは焦りを感じる。また、子どもが出来ないソフィアは、ソルフ医師に助けを求めるが、彼はいつも真面目に診察してくれず、はぐらかすばかり。一方、サンツフォールト家の女中、マリアは、魚売りのウィレムに恋をし、日々の逢瀬に幸せを感じていた。
日々の気晴らしとして、コルネリスは絵画商人マテウスに頼み、ソフィアとの肖像画を描いてもらうことを思いつく。そのマテウスが紹介したのが、将来を嘱望されている若手画家、ヤン・ファン・ロースであった。階段から降りてくるソフィアの姿を見た瞬間、恋に落ちたヤン。彼の横柄な態度に最初は嫌悪感を抱いていたソフィアだったが、絵を通じて向き合う時間の中で、徐々に彼に惹かれるようになっていく。時を同じくして、魚売りのウィレムは、愛するマリアとの結婚の為、一攫千金をかけてチューリップ売買の世界に飛び込み、球根の所有権証明書を手に入れる。それは一般的な白いチューリップの証明書のはずだった…。
ウィレムはチューリップの証明書への署名をもらうため、所有者であるウルスラ修道院の修道院長の元を訪れるが、修道院に咲いていた花の中には、白と真紅のブレイカーが1輪咲いていた。“マリア提督”と名付けられた奇跡の球根の証明書を入手し幸せを手に入れたはずのウィレムだったが、ヤンとの逢瀬を続けるソフィアの姿をマリアだと勘違いし、傷心のなか酒場で財布を盗まれてしまう。恋人も財産も失ったウィレムは、そのままアムステルダムから姿を消すのであった。
愛するウィレムを失ったマリアは、失意の中で自分が彼との子どもを授かったことをソフィアに告白するが、これを聞いたソフィアは、ある計画を思いつく。それは、マリアの子を自分の子どもだと夫に信じ込ませる計画であった。一見無謀とも思えるこの計画は、ヤンやソルフ医師を巻き込み、人々の人生を大きく動かすことになる。
妊娠の発覚により妻と夜を共に過ごせなくなったコルネリスは、仕事という嘘をつきユトレヒトの女に会いに数週間家を留守にする。この間幸せな日々を送るソフィアとヤンであったが、ソフィアを幸せにするためにどうしてもお金が必要なヤンは、チューリップの球根を盗みにウルスラ修道院へもぐり込むが、捕まってしまう。球根を諦めきれず自らチューリップ売買に乗り出していくヤンであったが、その結末は―。
チューリップへの熱と、愛する人への想いが交わる中、それぞれの人生が交錯していく。
(公式サイトより)