(うらおもてふたつだま・すぺいんきだん) 1896年(明29)11月~1897年(明30)6月 雑誌「人情世界」連載、日本館本部発行。 邑井貞吉(むらい・ていきち, 1862-1902)は講談師の名跡を父邑井一から継承し3代目として活躍していた。円朝や涙香による西欧読物の翻案の流れを受け継ぎ、積極的に新作物に取り組んだ。これも珍しいスペインの物語を底本として、これまでの一般的な口演速記ではなく、自分で語ったものを自分で筆記するという「自講自記」の新たな試みで寄稿している。しかしこの3代目貞吉は40歳で早逝する。ある意味では貴重な作品だったと言える。 男女の双子として育った女の子のお力は、親兄弟…