カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスとの共著作の名称。実際の草稿のほとんどはエンゲルスによって執筆されているといわれている。
1845年から1846年にかけて執筆された作品で、題名のIdeologieとは、ここでは観念論の意味を持つ。青年ヘーゲル派の批判を通じて、唯物論的な歴史観の基礎を明らかにしようとした著作だが、マルクス・エンゲルスの生前は刊行されず、草稿・原稿の集積として終わり、死後に刊行された。
ほんとに久しぶりにデモも集会もない週末でした。 実践課題がなかったら、そこはやはり理論です。 前回マルクス「ドイツ・イデオロギー」について述べました。 マルクスとエンゲルスがドイツの観念論、さらに唯物論哲学=フォイエルバッハを批判した。 なぜか? この本を読むと哲学用語がいっぱいあって、これは「哲学論争」みたいに見え、私もずっとそう思ってきたけど、 これがじつはそうではなかったのですね。 斎藤幸平さんではないが、そこには実践問題があった。 それも、そこにあったものは労働運動をめぐる問題だったのでした。 当時、ヘーゲル観念論を初めてきちんと批判できたフォイエルバッハが労働者の理論として課題となっ…
光文社古典新訳文庫では「ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判序説」の二編(と補論、論文など)を収録している。このエントリーには「ヘーゲル法哲学批判序説」の感想を載せる。 2022/06/21 カール・マルクス「ユダヤ人問題に寄せて」(光文社古典新訳文庫) 1843年 このあと、マルクスは「経済学哲学草稿」と「ドイツ・イデオロギー」を書く。 ヘーゲル法哲学批判序説(1843) ・・・ マルクスはこの論文の前提になっていることを書いていないので、補足しながら読まないといけない。当時のドイツの状況はカール・マルクス「ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判序説」(光文社古典新訳文庫)に書いたので…
ネットで川崎昌平『売れないマンガ家の貧しくない生活』を読んでいるつれあいは、マンガ家の妻の視点でマンガ家自身がマンガ家のことを描くというこの作品の奇妙さを口にしていた。 売れないマンガ家の貧しくない生活 (コミックエッセイ) 作者:川崎 昌平 KADOKAWA Amazon 作品の中の話題が、マンガ家の本業労働(編集者)、副業としてのマンガだけでなく、家庭生活や家事とのバランス、最終的には出産・育児という大仕事にまで及ぶために、その広いフィールドを客観的に見て語る視点がほしかったのだろうと思うが、確かに奇妙ではあり、可笑しみがある。客観視するとはそういうことなのだろうけど。 川崎はマンガ家とし…
「資本論」の批判的な読みをしているからといっても、宇野弘蔵の「経済原論」を読む気にはなれなかったので、講演を基にし書き直した新書を選んだ。1969年初出。ながらく品切れだったのが2009年に復刊された。いくつか発見はあったものの、内容にはいささか失望。 1 『資本論』の経済学 ・・・ 資本主義を規制する三大経済法則があって、価値法則・人口法則・利潤率均等化の法則である。御大層な説明が続くが、経営学や企業会計では当たり前の話。資本は労働力を商品として購入している、利益は設備投資とあわせて労働者雇用に向けられる、個々の資本は利益最大化をめざすが企業間取引が行われるので利潤率の平均をとるを業界でほぼ…
2016年。ピケティ「21世紀の資本」がよく売れたので、マルクス「資本論」の可能性を見てみよう、という志で書かれたらしい。 第1章 マルクスはいかに受容されてきたか―四つの断面 ・・・ マルクスは主著が未完であったし、運動や革命の展望を語らなかったので、死後、さまざまな解釈が現れた。史的唯物論と科学的社会主義を標榜するエンゲルスとカウツキー、秘密結社と革命家を育てるレーニンとスターリン(と毛沢東も?)、主体と実践を重視するルカーチとコルシュとフランクフルト学派など。1960年代にスターリニズムへの批判が行われると、革命論より疎外論でマルクスの重要性を見るようになる。21世紀には資本主義経済の批…
会計こそ線形代数の大源流?
マルクスの唯物史観によって転換された、生活を基礎とした歴史観 マルクスと唯物史観 【マルクス『ドイツ・イデオロギー』】 理念や観念より生活の歴史 【ヘーゲル『歴史哲学講義』】 歴史の基礎としての生産様式 世界の動き方についての認識の変化 前回のお話 https://www.waka-rukana.com/entry/300/2021.02.10 マルクスの唯物史観によって転換された、生活を基礎とした歴史観 新訳 ドイツ・イデオロギー (マルクス主義原典ライブラリー) 作者:マルクス,エンゲルス 発売日: 2000/07/01 メディア: 新書 マルクスと唯物史観 マルクスの歴史観(もしくは歴史…
沖縄がアメリカから施政権が日本に返還され,日本に復帰して50年となった。沖縄県は日本の国土面積の約0.6%にすぎないが,その沖縄県に米軍専用施設の約70%(面積約1万8千ヘクタール)が集中している。東京23区のうち13区ほどにあたる。 この間,本土の基地は縮小してきた。国営ひたち海浜公園,代々木公園,味の素スタジアム,JR立川駅北口市街地,光が丘,皇子山総合運動公園,神戸大学六甲台第2キャンパス,鷹の巣レクリエーションセンターなどはかつての米軍基地だったところだ。 50年前,全国のあちこちで叫ばれた「核も基地もない沖縄」の実現は50年経った現在の課題であり続けている。 -関連エントリー--ふた…
1件の申請から1件が採択された(→https://www.mext.go.jp/b_menu/boshu/detail/mext_00211.html)。 -大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(東京海洋大学との共同)「南極地域観測事業基本観測(海洋物理・化学)代表観測 -1年前のエントリー--山本武利著『検閲官——発見されたGHQ名簿——』→https://akamac.hatenablog.com/entry/2021/05/14/153758-2年前のエントリー--(その2)山本章子著『日米地位協定——在日米軍と「同盟」の70年——』→https://akamac.hatenabl…
「世界」を知ろうとすること――「世界」への異和、「世界」への絶望 山本芳久『アリストテレス 二コマコス倫理学』 ■山本芳久『アリストテレス 二コマコス倫理学』2022年5月1日・100分de名著(NHK出版)。 ■有隣堂町田店・ ¥600にて購入。 ■テキスト・長篇評論・入門書。 ■2022年4月30日読了。 ■採点 ★☆☆☆☆。 【目次】 1 「素読(すどく)」ノスゝメ.. 2 2 これは自己啓発本か?.. 5 3 「想像上」のアリストテレスについての感想... 7 3-1 プラトンとの切断... 7 3-2 体系性・網羅性の罠... 10 3-3 根を喪うこと/世界との和解... 12 3…
ブラジル・カスアスドスルで開催中の第24回夏期デフリンピックの卓球競技の女子ダブルスで,亀澤理穂・川﨑瑞恵ペアが2大会連続の銅メダルを獲得した(→https://www.jfd.or.jp/sc/brazil2021/arc/category/tabletennis)。 卓球王国WEBは詳しく報じている(→https://world-tt.com/blog/news/archives/22256)。 -関連エントリー--男子団体・銅,女子団体・銀(デフリンピック卓球)→https://akamac.hatenablog.com/entry/2022/05/08/144828--女子団体銅メダル…
なるほど「判断の次元が潰れている」とはこういう事なのか…
そもそもの出発点は「性癖偏差値」概念と「Queer球面」の概念の重ね合わせ。
カール・マルクスは「ドイツ・イデオロギー(1846年)」の中で「共産主義は需要と供給の関係といった人間を疏外する非人間的要素を一切排除した真の生産を提供する。逆をいえば労働者を真の創造的な生産に従事させるのが共産主義の本懐なのである(意訳)」と述べています。プルードンやヴァイトリングに魅了されているドイツ人手工業職人を彼らから引き剥がすには、そう断言せざるを得なかったのです。 むしろこの時マルクスが主張した「共産主義=自らの手で作品を生み出す職人がきちんと対価を受け取れる世界」なる理念は(浮世絵出版を含む)江戸時代日本の出版産業、フランス近代芸術、アールヌーボー運動、バウハウス運動、日本のオタ…
私のはてなブログの題名が「諸概念の迷宮」というのは、本来それが本質的には迷い込んで来た「昆虫系アカウント」を「そうか、ネトウヨの大源流はカール・マルクスなんだ!!」「オイラーの公式や線形代数を知ってるだけでこの世に存在すべきでない変態の証」などと悟らせて返すハニーポットとして構成されているからです。ここでいう「昆虫系アカウント」の特徴は以下の二つ。 価値判断の次元が全てを「敵・味方」の離散一次元で捉えるレベルまで縮退。 あらゆる知識に欠乏している上、知識に対する敬意にも欠けている。 このヒントだけでもう「どうやって伊達にして返すか」大体想像可能だと思います。ただしこの方法が通じない相手も…
カール・マルクス「ドイツ・イデオロギー(1846年)」の再読中、マルクス主義フェミニズムの根幹となったであろう記述を見つけました。この著作の特徴は「私的所有と分業こそが利益再分配の不平等の大源流」と定義付けている事で、その一環として既に「夫による妻と子供達の奴隷化」が例示されているのです。 この時点では問題を質的に把握したに過ぎないが「剰余価値論(1847年)」において「搾取=階級社会において生産手段の所有者が直接生産者をその生活維持に必要な労働時間以上に働かせ、その労働生産物や成果を剰余価値として取得すること」なる概念が提示され、量的把握についても先鞭が付けられる展開を迎える。