かつての同僚がそのとき付き合っていた彼女と紅葉を観に行った際、その彼女の口から出たセリフだ。同僚はそのことを大変残念そうに話した。デートのために紅葉の頃合いも見計らい、良い景色を見せようと苦心して連れて行ったのに、紅葉などつまらないから早く他所へ行こうというような雰囲気だった、と。なんとも風情のない人だ、と一緒に笑ったが、いま思えば、若い人がそう捉えるのも無理はない、とも感じられる。葉っぱが紅いだけ、ということは何も間違っていない。 そこに美しさを見出すものはなにか。ひとつには、色の変化による季節の移ろいを、人生に見立てているのではないか。少し風が吹けば落ちてしまいそうな儚さ。また、木々を彩る…