就職した頃、他にすることもなく、打ち込むべき仕事もなかったので、本を読んでばかりいた。入社したての会社には、友だちもあまりいなかった。 最初の勤務地は千葉県内の内房にある街だった。 そこでは、椎名さんの小説に出てくる風景の断片を、そのまま見ることができた。 その風景の中を、小説に書かれたことをなぞるように生きているつもりになれた。 椎名さんの作品には、20代くらいの青年が、小さな会社で働く内容のものが多い。 映画化されたものもある。 椎名さん自身の経験が反映されているのだろう。 自分もちょうど就職したてで、色々と共感することがあった。 この本には、実らない恋愛のストーリーがいくつかある。 ちょ…