端的に言えば「上司による部下いじめ」。略称パワハラ。
2012年1月、厚生労働省は初めて、パワハラの定義付けを含めた、予防や解決の取り組みについての報告書を発表した。報告書に凭ると、職場のパワーハラスメントの定義は以下の通りである。
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(※)を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。
職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告 |厚生労働省
※ 上司から部下に行われるものだけでなく、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して様々な優位性を背景に行われるものも含まれる。![]()
同報告書では、上司から部下だけでなく、部下から上司の場合もあるとして、例えばパート労働者が集団で上司の店長に嫌がらせを行うことや、ITが得意な部下がITの苦手な上司をばかにすることなども含まれるとしている。
厚労省は「一緒に働いている人たちが全て人格を持った人間なんだと、そういった意識をちゃんと持ってもらうことが重要」としている。
職場でのパワーハラスメントについては、「業務上の指導との線引きが難しい」といった指摘もあるが、厚労省では「各企業や職場で認識をそろえ、パワハラの範囲を明確にするよう取り組むことが望ましい」としている。
各都道府県の労働局に寄せられたパワーハラスメントに関する相談件数は2010年度で3万9400件と、8年前と比べて6倍と急増しているとおり、深刻な状況である。
かつては「上司の部下に対する指導」という名目で表面化することは極めて稀だったが、近年クローズアップされてきた問題である。
「飲み会への強制参加」もパワハラとして捉えるか、それとも社会通念上の無言の圧力として捉えるか、判断の難しい面があり、またそれに加えて、上司部下間の相性ならびに部下の資質に左右されるところがあるために、一概に「どこまでがパワハラか」を判断することは難しい。人材育成上の見地から、こうした行為にかなり厳しい措置を取る企業も増えつつある。
職場での性的いやがらせである「セクハラ」でも、一部このパワハラ的要素が混じる例が多い。