大正から昭和初期にかけて、邦楽界では宮城道雄らが西洋音楽の影響を受けて新しい日本音楽の創造に取り組んでいた。同じころ美術の世界において「東西の絵画の綜合」というテーマを掲げ、日本の精神文化に根ざした独自の油彩画を追求する一人の画学生がいた。のちに洋画家として大成する須田国太郎である。このほど東京・世田谷美術館で始まった巡回企画展「生誕130年没後60年を越えて 須田国太郎の芸術〜三つのまなざし 絵画・スペイン・能狂言」では、須田の作品の中でも能・狂言に関連する作品がクローズアップされるとあってさっそく訪ねてみた。須田は京都帝国大学と大学院で美学・美術史を研究した後、1919年(大正8年)、28…