朝の駅前は、冬の風が強かった。 マイクを握る手がかじかみ、言葉が息に変わって白く漂う。 それでも僕は立ち続けていた。通り過ぎる人たちの中に、昨日より一人でも立ち止まる人がいれば、それだけで意味があると思っていた。 そんなある日、ひとつの封筒が届いた。差出人は「〇〇党・政策委員会」。 薄い紙一枚。だがそこには、僕の半年間の活動を大きく変える提案が書かれていた。 「正式に推薦を検討したい」 その一文を見たとき、胸の奥に熱と重さが同時に落ちた。 無所属で始めた活動に、政党の名がつく。 “現実を動かす力”を持つということだ。 組織と理想のあいだで 夜、事務所の照明だけが明るかった。 机の上のノートパソ…