佐野元春が吉増剛造の詩に出会ったのは、高校時代だった。吉増の初期の代表作「黄金詩編」(1970)である。その難解な表現に頭を抱えたらしい。 「これを読んだ時、表現は非常に複雑、前衛的なのでどんな意味がここに含まれているのか(考える)ということを僕は諦めて、言葉の韻律に焦点を絞って心の中で読むのではなく、語ってみたんですよね。そうすると驚くことに、非常に音楽的だという発見があったんです。何とか何とかという節があってその節が後半にいくにしたがってビルドアップして大きなダイナミズムを生んでいく。それを心の中で朗読することによって(楽しみが)得られた。一つの詩を読む楽しみにつながっていきましたね」 「…