童話『銀河鉄道の夜』は難解とされているが,この物語に登場する人物を賢治が生きた時代の実在の人物に当てはめて読むと理解しやすくなる。前報(石井,2019)では,難破船の女の子だけでなくジョバンニとその母にも賢治の相思相愛の「先住民」の末裔としての恋人が投影されている可能性のあることを報告した。 本稿では,物語の中でジョバンニが「先住民」の末裔として具体的にどのように描かれているのか整理し,恋人のルーツと賢治と恋人の破局へ導いたと思われる「先住民」が示す「まっくらな巨きなもの」の正体について明らかにする。 1.なぜジョバンニの生活様式をアイヌ風にしたのか 童話『銀河鉄道の夜』第四次稿の三章(家)で…