フィクションは現実に対して効力/抗力を持ちうる。それはたかがフィクションだからというムードのようなものにぼくが反対し続けるための一つの宣言です。先日、大学で受講しているフランス哲学の講義の、まぁ余談のような箇所で「実験国家としてのアメリカを成り立たせるためにはメルヴィルやフォークナーのような「物語」が必要なのではないか」という、問題提起といってはおおげさかもしれませんが、そのようなことを聞きました。ぼくは英米文学が専門ではないのでメルヴィルもフォークナーも片手で数えられる程度しか読んでいませんが、これを現実に対する虚構の効果と位置付けることは牽強付会ではないでしょう。 そんな虚構と現実という問…