『藤田嗣治』の{戦争画}を本歌に黒一色で描いた『平川恒太』の連作を観た時に仰け反ったことを思い出した。 本展は、それとは毛色は異なるものの、「国宝」の価値と、それを鑑賞するってなんなのか?との疑問がむくむくと心中に湧き上がる。 例えば「興福寺」の〔阿修羅像〕。展覧会でも観ているし、高名な写真家が撮った作品でも目にすることは多い。 少年のような体躯に三つの顔、六本の手。一度観れば、忘れることはない。 が、それが平面上に、シルエットの如く黒一色で描かれていたらどうか。 その特異な形態故に、一度観たことがある人なら「あ!阿修羅像だ!!」と直感できる。 要は、それが何かを分かるためなら、必ずも彩色は必…