Brugge (オランダ語:ブルッヘ / ブリュッヘ), Bruges (フランス語:ブリュージュ、英語:ブルージュ)
首都ブリュッセルから北西へ約90kmに位置し、ベルギー北西部のヴェスト・フランデレン州 (West-Vlaanderen) の州都である。北海に近く、人口は約11万人。造船業としても盛んな都市だが、ベギン会修道院など世界遺産に登録されているものがいくつかあり、ヨーロッパでも屈指の観光都市である。
サッカークラブ 「クラブ・ブリュージュKV (Club Brugge KV)」 と 「セルクル・ブリュージュKSV (Cercle Brugge KSV)」 の本拠地でもある。
生気のない水辺と通りのものいわぬ大気の中にいると、ユーグはあまり辛いと思うこともなく、ますますゆったりと死んだ妻のことを思った。よりはっきり彼女が見え、よりはっきりしゃべるのが聞こえ、運河に沿って道すがらオフィーリアのようなその顔を見付け、遠くのくぐもったカリオンの歌声の中にその声を聞いたのだった。
街もまた、かつては愛されもし美しかったが、同じようにその思い出を形作ってくれた。ブルージュは彼の死んだ妻だった。そして死んだ妻はブルージュだった。全てが同じ運命にひとつとなっていた。それが死都ブルージュ、街そのものが石造りの河岸に埋葬され、運河の冷たい動脈が走っていた。そこには海の大きな鼓動も届いてはいなかった。
ローデンバック著『死都ブルージュ』より