2018年の夏のある日、シリア出身だという人に初めて会った。彼は広島大学の大学院で建築を勉強していると言った。F市で行われたインターンシップに私たちは参加していた。インターンとは言ってもほとんど観光のようなものだった。F市にある工場や会社を巡って話を聴くのだ。のらりくらりと大学生をしながら就職もまともに考えたことのない私にとっては気楽なものであった。社会科見学でお菓子工場を訪れた9歳の時と同じ感動をもって金属製品が作られる工程を見ていた。港に面した工業地帯から山際にある漬物工場へ、その次は地域に密着した老人ホーム。私たちはバスに揺られて移動した。隣りに乗っていたのがシリア人の彼だった。 F市の…