医師の日野原重明さんは「ペイ・フォワード」という言葉を胸に刻み、105歳で亡くなるまで医療の充実や社会貢献に尽くした。著書「いのちの使いかた」(小学館文庫)に、その思いをつづっている ▼ペイ・フォワードは、誰かに親切にされたりした時の恩をその人に直接返すのではなく、まったく別の人に返すことを意味する英語だ。この言葉を題名にした米国映画もある。日本にも同様のことを意味する恩送りという言葉がある▼日野原さんがペイ・フォワードを意識したのは、1970年の赤軍派による「よど号」ハイジャック事件で人質となった体験がきっかけだ。解放された時に自分は生かされていると感じ、それを恩と受け止めた。以後、いかに人…