鉄仮面:江戸川乱歩 1940年(昭15)博文館刊。久生十蘭・訳。 1938年(昭13)大日本雄弁会講談社刊。江戸川乱歩・訳。 フランス史における「鉄仮面」の史実はルイ14世時代の奇妙な謎としてデュマやボアゴベをはじめ多くの作家たちの創作欲を搔き立てた。名前を秘せられたある人物が鉄の仮面を被せられたうえで外部世界との関係を一切絶って生き永らえさせるという残酷な刑罰である。単なる終身刑以上に苛酷だ。 ボアゴベは、その人物を王政に対する反乱軍の指揮官だと設定してこの小説を書いた。鉄仮面を牢獄から救い出すために30年もの年月をかけて、許婚のテレーズと忠実な部下たちがあの手この手で試みる物語。自分たちの…