髪を飾る花冠のために野に咲く草花を摘みに行く話といい、双子の兄妹の入れ替わりといい、魔女の予言によって夫の出世を知った女が、夫をその気にさせ、いざ事が成就した暁にその報いをうける運命の皮肉といい、人に知られた悲劇、喜劇を換骨奪胎して一つに縒り合わせ、マギー・オファーレルは一篇の小説に仕立て直した。これはある「比類ない人」に捧げる一篇の叙事詩なのかもしれない。 多国間を旅する商船のキャビンボーイが、寄港したアレクサンドリアの港で猿使いの猿から一匹のノミをうつされる。やがて、それは船で飼われている猫に、船の中のネズミにと宿主を変えていき、多くの死者を出しながら、船は各国の港に停泊する。船員たちが「…