古書の世界で「アール・デコ挿絵本」は定着した呼び名ですが、必ずしも「名」が「体」を表しているわけではありません。二大巨匠であるバルビエとマルティは流行としてのアール・デコスタイルを超えた独自の画風をつらぬきました。また、マルティの最後の挿絵本はアール・デコ期をはるかに過ぎた1950年代に出版されています。 一方、ルパープやブルネレスキはまさに流行としてのアール・デコを体現した画家といえるでしょう。ブルネレスキの「フィリ」や「マズリパタンの王様」は我々がイメージする通りのアール・デコスタイルによる名作です。 しかし流行はやがて終わりを迎えます。クールだったアール・デコは1930年代になるとすっか…