そういえば、マルセイユとはそういうぶっ飛んだ街だった。数十年前に住んでいた頃は、払う時点でお財布がない事が多かった私は、よく近所の店でツケで買い物をした。夫は「そんなことが出来るのか?」と驚いていたが、それは信頼関係の賜物だった。チーズ屋のおじさんは「教師を辞めてお金を貯めて店を開いた」とかアラブ24時間スーパーの兄ちゃんは「モロッコ人だが7歳の時にフランスに家族と移住した結構な苦労人だ」など近所の店員の人生を隈なく知っていた。もう、そんなマルセイユは存在しないのかもしれない。 <海辺を歩くと地中海の色が眩しい> 当時、大学の帰り道に駅から歩いていると「お嬢ちゃん!」と声が掛かった。振り返ると…