Hatena Blog Tags

ミニマル・ミュージック

(音楽)
みにまるみゅーじっく

(アカデミックな)現代音楽の一ジャンル(ないし一技法)。テクノ音楽の一ジャンルである、ミニマル・テクノとは別の音楽。名称は、マイケル・ナイマンが「ミニマル・アート」との関連性から思いついたらしい。

個々の作曲家によって定義と内容にやや違いがあるが(おしなべて)、特定のフレーズの繰り返しと展開をつうじて、音の重なりとズレをつくりだし、重なり合う音の波のようなものをつくりだし、特異にして幻惑的な印象を産みだす音楽と呼ぶことができる。また、持続音(ドローン)とそのヴァリエーションを通じ、音の微細な差異に聴取の焦点を置かせる音楽ということもできる。つまり、反復/持続の音楽。ラ・モンテ・ヤングは、このドローン系統のミニマル・ミュージックのゴッドファーザー。ヴェルベット・アンダーグラウンドに参加していたジョン・ケイルも、一時期、ラ・モンテ・ヤングとともに演奏していた。テリー・ライリーは、ラ・モンテ・ヤングのおとうと弟子のような存在だが、ドローンやテープ・ループを背景にインプロヴィゼーションを行うスタイルを確立した。テリー・ライリーのIn Cという作品が、ミニマル・ミュージックの最初の金字塔と呼ばれている。音の組み合わせではなく音そのものを聞くことを楽しめるかどうかで「ミニマル・ミュージック」や実験音楽を楽しめるかどうかが分かれる。

このジャンルの音楽家としてスティーヴ・ライヒフィリップ・グラスラ・モンテ・ヤングテリー・ライリーらがいる。

ミニマル・ミュージックという形式の登場は、1960年前後であり、当時西欧世界におけるインドへの関心や、インドネシアのバリ島におけるガムラン音楽などへの着目から、おもにアメリカ人の手により生まれてきたということができる。ラ・モンテ・ヤングとテリー・ライリーはパンディット・プラン・ナートに師事し、ライヒはガムラン音楽やアフリカ音楽を学んだ経験がある。グラスは優等生だったので、パリでナディア・ブーランジェに師事していたが、ラヴィ・シャンカールに出会った。

視点を変えるならば、その誕生の動機には、既存のハイ・アート系の音楽への批判があった。具体的には、第2次世界大戦後のヨーロッパ系現代音楽が、あまりに音楽の微分化と制御の緻密化を押し進めるあまり隘路にはまりこんでいったこと。そして他方、アメリカ系の、ジョン・ケージらの実験音楽がユーモラスではあるが、やはり快楽的ではない、という批判が。ライヒは、ケージの実験音楽から大きな影響を受け、ブーレーズらの前衛音楽(セリエリズム)にも魅力を感じていたが、ジョン・コルトレーンも大好きだったらしい。つまり、ミニマル・ミュージックには、管理一辺倒の前衛音楽と、単なるカオスにしか聞こえない実験音楽との対立を融合させようとした、という歴史的位置を与えることが出来る。

なお、70年代後半からはミニマル・ミュージックは、とりわけフィリップ・グラスやスティーヴ・ライヒにおいては、その名とは裏腹に、ユダヤ主義とむすびつき、巨大化していった。その時期以降の主要作品にロバート・ウィルソンとフィリップ・グラスの『海辺のアインシュタイン』がある。かれらはそれをあえて「オペラ」と呼び、その言葉の意味を挑発的にとらえなおした。厳格な意味では、70年代後半以降のライヒとグラスの音楽は「ミニマル・ミュージック」ではない。

ジョン・アダムズをはじめとする多くの「ポスト・ミニマル・ミュージック」の作曲家においては、「ミニマル・ミュージック」は語法の一つとして受容されている。現在のアメリカの大学の音楽教師の大半は、ミニマリズムを通過している。

このタグの解説についてこの解説文は、すでに終了したサービス「はてなキーワード」内で有志のユーザーが作成・編集した内容に基づいています。その正確性や網羅性をはてなが保証するものではありません。問題のある記述を発見した場合には、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

関連ブログ