新 折々のうた 3 (岩波新書 新赤版 531) 作者:大岡 信 岩波書店 Amazon 大岡信は齋藤史の 首のなきらかんを見れば首のあるらかん共こそあはれなりける を取り上げて(28㌻)、 歳月を経て、首のない羅漢も無傷のままの羅漢もあるが、両方見ていると、無傷のままの羅漢の方が一層あわれを感じさせるというのだ。矛盾した観察のようだが、案外共感する人も多い見方だろう。 と述べる。詩人の清岡卓行もその「共感する人」の中の一人なのではないか。僕は、清岡が評論「失われた両腕」の冒頭で次のように言っているのを思い出した。 ミロのヴィーナスを眺めながら、彼女がこんなにも魅惑的であるためには、両腕を失っ…