赤面しそうな言葉 書棚を整理していると見たことのない緑色のファイルが出てきた。 亡き妻千恵のものだった。 ファイルには、昔、僕が彼女に送ったとみられるメールを印字した用紙が30枚ほど入っていた。最初の数枚は彼女のことを「松永さん(旧姓)」、途中から「千恵ちゃん」と呼び方が変わっている。交際を始めたばかりのころのメールだろう。 声が聞きたい。飛んで行きたい。今すぐ会って抱きしめたい。 今読めば、赤面しそうな言葉が並ぶ。 2000年1月28日には「25歳の誕生日おめでとう」と送信していた。僕が千恵にプロポーズした日だった。その年の春、彼女の左胸にしこりを見つけ、7月に乳がんであることが分かった。 …