フランス王シャルル5世の弟、ベリー侯ジャン1世(Jean Ier, 1340年11月30日 - 1416年3月15日)が生前最後に作らせた豪華装飾写本。完成はベリー公の死後で、制作にあたったランブール兄弟も没した後になる。 ヤン・ファン・エイクも携わった『ベリー公の美わしき時禱書』に比べると制作者集団にはまとまりがあるようで、作品としての一貫性を強く感じ取れる。歴史の中で喪失してしまった部分もなく高い完成度のまま複製でも享受できる。淡さと鮮烈さとが同居する画面に、鑑賞者は心のざわつきを感じずにはいられない。 空気遠近法以前の朦朧としたところのない装飾的な平面構成の力強さに戸惑いながら魅了されて…