はじめに 本書を読んだ感想を以下のようにまとめた。 しかしそれにしても海外の短編小説のとくにこの修辞のたたみ掛けは苦手だ。まるで文学とは修辞である、というようなものだ。ドイツでもフランスでもロシアでもイタリアでもスペインでもアメリカでも同じだし、翻訳文体もまたみな似通っているように思われてならない。 とはいえ、本書には、どこの国でもない言葉をペルシア語と偽って教えられそれで詩を三篇書いた男の芸術的苦悩(『無限大体系対話』)があり、私はこの話を目当てにこの本を借りたのだったが、それはあまり面白くはなかった。 だがしかし、この作者の文学者、というか小説家としての「業」の深さは、まざまざと見せ付けら…