かつて暮らしていた町は十割蕎麦で名を知られており、10月の新蕎麦の季節には蕎麦祭りが催されていた。 人口3,000人余りの小さな町のメインストリートに、町内だけではなく、近隣の蕎麦どころのお店がテントを並べて味を競い合う。 我が集落でとれる蕎麦は美味しいと評判で(昼夜の寒暖差が大きいのと、土壌が適しているらしい)、蕎麦屋ではないものの、集落として毎年参加していた。 お客さんたちはテントをハシゴして味比べ。 地元産の野菜やカフェの屋台も軒を連ね、 時折りイベント会場で歌うシンガーの声が聞こえる。 殆どシャッターが降りている、普段は静かな通りが、その日だけは大賑わい。 そして、宴もたけなわの夕刻、…