昼下がりの公園にて、年端も行かぬ5歳位の少女が入口を通ろうとしていたから、私は戸を開けて彼女を通した。すると彼女はこちらを振り向いて、顔を斜に、口元に微笑を湛え乍らmerci, monsieurと、いとも優雅な挨拶を私に返して、軽やかな足取りで去って行った。私の心は甘美な情緒に涵った。 本日はルーヴル美術館へ。態々予約をした上で(展示の予約など生涯で初めてだ)。 ドラクロワの絵画を見れたらそれで良し、混雑するだろうし早々に引上げようと考えていたのだが、あの広大な宮殿内、地図を見ない私は案の定、道を見失った。 気が付くと私は彫刻展示室にいた。白い大理石の肌を持つ、全き肉体を持った彫像たちに囲繞さ…