前回に続いてアガサ・クリスティを取り上げる。最初に書いておくと、クリスティのミス・マープルものの短篇集である創元推理文庫の『ミス・マープルと13の謎』(深町眞理子訳, 2019)とハヤカワ文庫の『火曜クラブ』(中村妙子訳, 2003)は同じ作品の翻訳だ。1932年にイギリスで "The Thirteen Ploblems" のタイトルで刊行されたが、アメリカ版では "The Tuesday Club Murders" と題された。またイギリスのペンギンブック版では "Miss Marple and the Thirteen Ploblems" と題された。おそらく中村訳はアメリカ版を、深町訳は…