1年と半年前、私が職場を異動する時、同僚の還暦過ぎのおじいちゃんが言った。 「伊興1から文化人がいなくなる!」 文化人……今日では杳として聞かれなくなった言葉だ。戦後、市民的/民主的知識人を「進歩的文化人」と称したが、私がそのカテゴリーに該当するかは分からない。否、むしろ、客観的、主観的にも拒否するだろう。私の読書の傾向として「新もの食いはしない」ことが挙げられるし、そのために私は古典ばかり読んでいる。単純に不勉強なのかもしれないが、三十路も半ばを過ぎると、新しい物を追うことに疲れた。嵐山光三郎に倣って「退歩的文化人」と言いたいくらいだ。でも、内心では、南原繁、矢内原忠雄のように「キリスト教文…