2023年 初冬 雪が舞い始めた頃。 富山の片隅にある古い倉庫で、私は黒いBNR32のボディを半刻ほど見つめていた。 そして、一つの決断をする。 「よし今年は、ボディをやろう…。」 BNR32のボディレストアには、時間もコストもかかる。製造からすでに30年も経過した鉄の塊は、塗装の劣化だけではなく、錆との戦いになるからだ。サビは食品につくカビみたいなもので、車の塗装面に見えていたら、すでに周辺や深層まで侵されている場合が多い。 ボディパネルを開けたら無限地獄にハマる可能性もあって、ボディだけは手をつけないほうがいいだろう。 と、今までは決めていたんだ…。 錆は見えない箇所から、忍び寄り、浸食し…