当今の流行病はやりやまいは、私の仕事場所 山谷にも静かに、確かに拡がっているので、その間は炊き出しも取材もできない。この期に及ぶまで私は、新型コロナが私のライター活動を邪魔するとはゆめにも思わなかった。個人と社会のあらゆる障壁ボーダーを突破することが私のライターとしての使命だと考えていたのに。実はこの理想はまさしく開高健のもので、彼は特にルポルタージュを書く際にそのことを自覚していたのである。やはり、彼は偉大な作家だと感得させられる。今の私は彼の靴の紐を解く値打もない。 取材に行くことを制限されているので、この間、私は本を読むことにしている。今、もっとも精力的に読んでいるのは、ロバート・D・パ…