ストリート・レジェンド ― 絆の軌跡 ― 第1章 走り屋の街 首都高のアスファルトは、夜でもまだ昼間の熱を抱えていた。 夏の夜風は湿り気を帯び、鼻腔にガソリンと焦げたゴムの匂いが混じる。白い蛍光灯が規則正しく並ぶトンネルを抜けると、街のネオンが一瞬、フロントガラスに滲んだ。 その中を、一台のR34スカイラインが駆け抜けていく。 ステアリングを握るのは蓮。二十代後半、短く刈った黒髪と、鋭い目つきが特徴の男だ。かつては首都高の走り屋たちの中で「伝説」と囁かれた存在だったが、今は表向き、仲間と小さなガレージを営んでいる。 だが血は、まだ騒ぐ。 この街の夜を駆けるときだけ、蓮は自分が生きていることを実…