かつてのわたしは、「悟りを得る」「悟りへ達する」と信じて疑いませんでした。しかしあるとき、ふと気づいたのです。 悟りとは、何かを手に入れることでも、どこかに辿り着くことでもない。ただ「もともと悟っていた」という事実に目覚めることだったのだ、と。 「今この瞬間」に在ることの大切さを説かれながらも、わたしは無意識のうちに「悟り」を未来に置いていました。「いつか悟るはずだ」「もっと修行すれば悟れるはずだ」と……。 何十年と坐り続けても、このパラドックスに気づけない人は少なくありません。実際、わたし自身もそのひとりでした。 でも本当は、とてもシンプルなことなのです。ただ、本来のあるがままの自分で在れば…