文藝春秋の最新号をkindle版で購入し、第169回芥川賞受賞作・市川沙央「ハンチバック」を読んだ。 受賞の決まった当日に流された記者会見の動画を見たら、著者が「当事者性が云々」という質問に答えていて、何となく敬遠しがちな思いでいたのだが、実際に読んでみると酷く面白かった。これは芥川賞を獲って当然の作品と思った。 不思議なもので、傑作というのは、細部にわたるまで凡庸さがなく、感動的な符合が至る所で生じる。 以下の記述は、未読の人にとっては意味不明で、既読の人にとっても意味を成さない、純粋に個人的な備忘録(メモ)である。 モナ・リザに赤いスプレーを引っ掛けようとした米津知子。 ハンチバックの体内…