Lev Semenovich Vygotsky レフ・セミョーノヴィチ・ヴィゴツキー 旧ソビエト連邦の発達心理学者。 発達の最近接領域の提唱やピアジェとの論争などで著名。 1896年にベラルーシで生まれ、1934年に結核のため夭逝。 主な著作に「教育心理学」「発達の最近接領域の理論」「思考と言語」がある。
世界の至る所で戦火が広がり,多くの人々の日常生活が奪われている現在,私たち教育に関わる者たちは,少なくとも教え子が戦火に巻き込まれることが無いような社会を目指して,日々の教育に対して責任を持つことが大切ではないかと考えてしまいます. ネット等では,日本のこれまでの教育について批判的に意見を語る論客も最近増えてきたようですが,皆様はお感じになりませんか.一方で,私の身近な友(退職教員)が,これまでの日本の教育にどのような問題点があるか分からないと言っていました.実に悲しい話です. さて,今回はヴィゴツキーによる発達の最近接領域の話題についてです.この内容については,「思考と言語」のp297 L1…
前回は,次に挙げる博士論文の(A)の部分,つまり「学校教育においては内言による思考が重要であること」を紹介しました. この回では,(B)の内容について紹介したいと思います. 学習における思考活動において,ヴィゴツキーが「真の意味の思考になる」と述べた自己中心的言語は,生理学的には外言であるが発話の対象を自己の外に置かないことから内言であるという.つまり,このとき児童は,自分のために発話しているのであり思考しているのだ.また,学齢期の児童は内言を思考の手段として利用することが可能となる時期でもある.従って,学習の過程においてこの思考過程を仕組むことが大切であろう.・・・・(A) また,我々は心象…
北大路魯山人の小文に「三州仕立ての小蕪汁」という一節があります。 出汁を強くしすぎず、火を入れすぎず、蕪が自ら甘みを開く瞬間を待つ──その姿勢は、魯山人の料理観そのものです。 彼は、素材の持ち味を最大限に生かすことを料理の本道としました。一言でいえば、“素材の声を聞く料理”です。 子どももまた、小蕪と同じように、自分で甘みを開く力を持っています。 しかし、その力が引き出されるかどうかは、こちらの火加減、味加減にかかっています。 強すぎれば焦げ、弱すぎれば味が出ない。ちょうどよい火加減・だし加減で、そっと見守る── そこに教育の核心があります。 ピアジェとヴィゴツキーが流れる“加減”の世界 この…
2026年になりました.今年もよろしくお願いいたします. ところで,皆さんは1月7日(水)にNHKで放送されたクローズアップ現代「最近,手書きしていますか? 最新研究が明かす"頭を動かす力"」をご覧になったでしょうか. 学校現場に限らず様々な領域でデジタル機器が浸透して,人間の書く能力が低下している現状が指摘されています.この番組は,手書きの重要性について再認識できる内容となっています.番組の途中でビデオ出演されている東京大学の酒井邦嘉さんですが,ご専門が脳機能解析学と言語脳科学ですので,以前から先生のご研究には注目していました. 私の研究で使用している「記憶再生マップ」も手書きなので,その効…
いつも丁寧にお読み頂きありがとうございます. 今回は,博論の「5.ヴィゴツキーに見る概念形成」の続きになりますが,ヴィゴツキーの内言論を受けて,学校教育における認知分野の問題点を考えてみました. 初めは外言の問題です.外言は言うまでもなく,音声言語を利用した他者とのコミュニケーション時に,口から発せられる空気振動です.これから書く内容は,授業中での外言と内言に関する実体験です. このことに関する博論の記述は,ヴィゴツキーの外言と内言に関する考え方の後に次のように記述しています. 「これまでの学校教育では,児童・生徒の思考については,彼らが表出したものを概観することにより,例えば、児童の表情が生…
今回は,博士論文の次のような記述について説明します. 「さらに重要なことは,心象(イメージ)である.ヴィゴツキーは,内言の意味は心象であると述べているが,これは思考に心象が深く関わっている証拠である.」 前回,授業において自己中心的言語や内言を利用した授業展開が重要であることを書きましたが,読まれた方はそれらの言語を用いた思考は,いったいどのようにしてなされているのかということに関心が向くはずです. 前出の博士論文の記述からは,ヴィゴツキーが「思考と言語」の中で「内言の意味が心象である」という直接的な表現で記述をしているように思えますが,そうではありません.このことに関しては,中村和夫氏著の「…
今回は,「5. ヴィゴツキーに見る概念形成」の2回目です. 前回述べたことは,授業では自己中心的言語(呟き)や内言による思考を取り入れた学習行動を授業の展開に盛り込むことが重要であることを述べました. ところが,これは私の勤務した佐賀県内の学校でのことですが,そのような学習行動が指導案の展開に盛り込まれた授業をほとんど見たことはありません.とにかく,最初から最後まで児童や生徒が発話する授業ばかりで,それが良い授業と考えられていました.また,一昔前の教育学部の授業では,ピアジェは学んだがヴィゴツキーはやらなかったとおっしゃる先生も多く見受けられました. 教育界のような権威主義的社会では,〇〇長,…
今回から数回は「5. ヴィゴツキーに見る概念形成」について解説していきます.レフ・ヴィゴツキーは,ロシアの心理学者として非常に有名で,これは彼の代表的な著書です. この中で論じられている概念に,外言と内言があります. 外言は音声言語でもあり,他者に向けられコミュニケーションに利用される言語で,ジェスチャーや手話も外言と考えられます.一方で内言は,頭の中で発せられる言語です. 外言や内言について,多くの人が説明をしています.次のブログもその一つです.参考になさって下さい. psycho-psycho.com 次は博士論文(青色文字)の記述の一部です.なお,赤色文字は解説です. 5. ヴィゴツキー…
※本記事は『ようこそ教育心理学の世界へ』(神藤貴昭・久木山健一著/北樹出版)をもとに、1年前の学習記録をリライトした内容です。現在も産業能率大学短期大学部の2年生であり、9月から3年次に編入予定です。大学院入試や社会人の学び直しにも対応できるよう、やさしく解説しています。 はじめに:発達と学習はどう結びつくのか? 「子どもがまだ理解できないのは、教え方が悪いから?」 いいえ、それは“発達段階”の問題かもしれません。学びには、“年齢に応じた心の成熟”という視点が欠かせません。 今回は、発達と学習の関係を明らかにした2人の巨人──ピアジェとヴィゴツキーを取り上げます。 ピアジェ:認知発達の4段階 …
※本記事は『ようこそ教育心理学の世界へ』(神藤貴昭・久木山健一著/北樹出版)をもとに、1年前の学習記録をリライトした内容です。現在も産業能率大学短期大学部の2年生であり、9月から3年次に編入予定です。ブログでは、大学院入試や学び直しを志す読者に向けて、教育心理学を噛み砕いて伝えることを意識しています。 はじめに:子どもは“ミニチュア大人”ではない 私たちが子どものころ、「大人の真似をしている」ような遊びをした記憶はないでしょうか。しかし教育心理学の世界では、子どもは単なる“大人の小型版”ではないという前提が、学びの出発点になります。 今回は、学習における「認知の発達」──つまり、子どもの考え方…