『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』(上)(中)(下)/ゲーテ/山崎章甫訳/岩波文庫 編集者と原稿のやりとりをしていると、たまに「だったら自分で書けば」と思うことがあった。従ったほうが記事が良くなると思えば従うし、注文を受けての原稿だからなるべく意向に沿うように努めるけれども、山に登ろうとしている人に向かって海に行く道を教えるような指摘は少々対応に困る。自分で書けば、とはもちろん言えないから、海より山のほうが楽しくないですかーとそそのかしたり、海に行くと見せかけて山に登ったり。 大学の非常勤で作文のワークショップを受け持つことになったとき、最初に考えたのはそのことだった。要するに、学生が書い…